Transcript
アナウンサー:
こちらはReachMDです。
この医療業界特集「アテローム性動脈硬化に対するLDL-C低下の影響の評価と画像診断法の区別」は、Amgenがお届けしています。このプログラムは臨床医を対象としています。講演者は、このプログラムへの参加に対して報酬を受けています。
司会のヘゲレ先生です。
ヘゲレ医師:
こちらはReachMDです。私は司会を務めさせていただくロブ・ヘゲレです。ウェスタン大学の医学・生化学教授です。また、カナダのオンタリオ州ロンドンにあるロバーツ研究所のロンドン地域ゲノムセンター長でもあります。今日は、アテローム性動脈硬化についてディスカッションします。オーストラリアのメルボルンにあるモナッシュ大学のモナッシュ・ヴィクトリアン心血管研究センターの心臓病学教授兼心臓病学部長のスティーブン・ニコルス教授にお越しいただいていまます。
ニコルス教授、プログラムにようこそ。
ニコルス医師:
ご招待いただきありがとうございます。
ヘゲレ医師:
スティーブン、冠動脈アテローム性動脈硬化症はどのように進行しますか? そして脆弱なプラークの影響にはどんなものがありますか?
ニコルス医師:
アテローム性動脈硬化症は慢性疾患であることが分かっています。数十年にわたって動脈壁に徐々に蓄積していきます。プラークは何年も無症状のままで経過することもあれば,最終的には安定狭心症を引き起こすほど閉塞することもあります。しかし一部には、脆弱になり破裂するもの、線維性被膜で破裂するもの、急性血栓症を誘発するもの、急性冠症候群につながる可能性があるものも存在することが分かっています。そのため、現在では一連の疾患全体にわたる病態の範囲を非常によく把握しており、プラークが人生の早期にどのように最初に発生するかが分かっています。
ニコルス医師:
肥厚の層には非常に多くのものが入ります。泡沫細胞の蓄積や、繊維性被膜の形成について理解しており、動脈壁がどのように再形成するかを理解しています。また、この進行性の管腔閉塞を発症することがあることも理解しています。しかし、急性冠症候群の患者の大半では、被膜の何らかの破裂があることもわかっています。これには、典型的な病変である被膜の破裂とプラークびらんがあります。後者は、内皮細胞層自体のみ破裂している場合で、この病変の根底にあるのは、炎症や脂質物質を多く含むプラークであることが分かっています。壊死性コアが含まれている場合もあります。そのため、事象を引き起こすプラークが、事象を引き起こさないプラークとどのように異なるかについて、多くのことがわかってきました。
ヘゲレ医師:
わかりました。プラークは多彩で、プラークの定量的側面やプラークの大きさがあり、一方プラークの質的側面もありますね。そして、プラークをより脆弱にするのはこの質的側面です。
では、脆弱なプラークの主な特徴とは何でしょうか?
ニコルス医師:
幸いなことに、この疑問に答えるのに役立つのは病理検査だけでなく、現在多くの画像診断法があり、プラーク内を調べ、現在では急性虚血性症候群の患者さんにこれらの技法を用いることができるようになっています。
そして、これはこの分野でも本当に役立ちました。例えば、光干渉断層計(OCT)は光に基づく技術で、他の多くの診断法よりもはるかに高い解像度でのイメージングが可能ですね。そして、このような脆弱なプラークの特徴を実際に見ることができます。
ニコルス医師:
脆弱なプラークには、通常65ミクロン未満の厚さの薄い繊維性被膜が含まれています。これには、大きな脂質コアが含まれていることが多くあります。炎症細胞が見え、プラーク内に新しい血管ができているのが見え、コレステロール結晶が見られます。コレステロールは泡沫細胞内にもできますが、結晶化状態でも存在し、プラークの脆弱性に直結することが分かっています。
ヘゲレ医師:
わかりました。私は内分泌専門医ですので、内分泌医として頭の中で整理しようとしているのですが、安定プラークがあります。この安定プラークには小さな脂質コアがあり、また厚く安定した線維性被膜があり、平滑筋細胞の高度の集団がある。これは、病変全体の安定化をもたらすような役割を果たす。ということは、これは脆弱なプラークとは対照的で、したがって、脆弱なプラークはその真逆ですね。脆弱なプラークには脂肪、大きな脂質コア、そして小さな薄い線維性被膜があり、マクロファージ集団の増加があり、それが病理全体をより不安定にさせる細胞のようになっているのですね。
ヘゲレ医師:
画像診断法についてお話しいただきました。プラーク負荷の変化やプラーク組成の変化を調べるという特定の目的に使用できる画像診断法は何ですか?
例えば、OCT、IVUS、血管造影などは聞いたことがありますが、これらの異なる画像診断法の違いは何ですか?
ニコルス医師:
血管造影から始めます。血管造影では、冠動脈血管系における管腔閉塞の程度を調べることができます。プラーク自体を見ることはしませんが、その結果をしっかりと見ます。閉塞性疾患を診断し、血行再建術が必要な患者をトリアージするために、診療の現場で非常に重要なツールとなっています。
光干渉断層撮影(OCT)は血管内イメージングカテーテルの先端で光トランスデューサーを使用するものです。これに付随するのが高解像度イメージングで、これらの脆弱なプラークの特徴をすべて検出できます。線維性被膜の厚さを測定でき、脂質コアのサイズを測定でき、これらのその他の機能も多く見ることができます。場で非常に重要なツールとなっています。
ヘゲレ医師:
そしてOCTについては、組成的な側面と言えるようなものを見ることができ、プラークの破裂や血栓を可視化することもできますね。
それ以上に重要なことに、いくつかの指標や、定量的閾値またはレッドラインとも言えるものが得られます。例えば、繊維状被膜の厚さ(FCT)は、内腔とシグナルが乏しい壊死脂質コアとの間の、シグナルが豊富な領域として定義されます。ここの正常値と異常値を分ける値は65ミクロンです。ですので、65ミクロン未満のものは薄い被膜を示唆し、そして薄い繊維性被膜は脆弱なプラークと関連します。
そして、脂質成分である脂質の円弧(アーク)については、これは拡散境界内でシグナルが乏しい領域を境界にする最も広いアークと定義されるものです。90度を超える広い脂質アークは脂質含有量の増加を示唆し、安定性が低いことがわかります。
そして脂質プール、またはコアを調べることもできます。これはさらに拡散領域、シグナルが乏しい脂質領域、シグナルが乏しい領域として定義することができます。これはつまりシグナルが豊富な被膜です。重要なことは、これらに数字を付けることができるということです。科学においては、測定できるものがあれば科学的に物事を追跡することができることを意味します。つまり、これらの指標を用いてプラークの定性的側面を調べることができるのです。
ヘゲレ医師:
それがOCTですね。IVUSでは違うものを見ます。プラークの範囲と分布を調べ、プラーク負荷の変化の一時的な評価を行うことさえできます。
ニコルス医師:
IVUS(血管内超音波検査)も再度血管内画像診断法ですね。この場合、カテーテルの先端にあるトランスデューサーは超音波トランスデューサーであり、光トランスデューサーではありません。これは基本的な画像の違いを生みます。これでも内腔と冠動脈壁の断面画像は得られますが、IVUSでは解像度が約100ミクロン、OCTでは10~20ミクロンぐらいと少し劣ります。つまり同様の感度、プラーク内のこのような特徴は見られませんが、一方で浸透性はわかります。
ニコルス医師:
血管壁の外縁が見えるので、動脈壁内のアテロームの負荷を測定できます。これを1つの断面でプラーク面積として測定することはできませんが、血管の長さ全体にわたり一連の断面画像全体を見ることはでき、これによりアテロームの体積を定量化することができます。異なる時点で、マッチさせた動脈セグメントでこれを行うことができます。これにより、疾患進行の自然経過に関連する臨床的因子を理解することができ、また臨床試験での治療がプラークの負荷を経時的に変化させる可能性があるかを知ることもできます。
ヘゲレ医師:
その点について、実際スタチン療法によりLDLコレステロールを低下することで、アテローム性動脈硬化の負担にどのような変化が観察されたのでしょうか?
ニコルス医師:
幸いなことに、長年にわたって多くの臨床試験が行われてきました。LDLコレステロールの低下は、アテローム性動脈硬化負荷を低下させることが示されています。アテローム性動脈硬化プラーク負荷に対するLDLコレステロール低下の影響を評価するため、連続IVUSイメージングを使用した臨床試験が多数行われてきました。また、これらの試験で観察したことで非常に一致していることは、LDLコレステロールの低下とアテローム体積の減少との間に直接的な関係があることです。
ヘゲレ医師:
プラーク負荷について話をしましたが、LDLコレステロールを低下させる療法がプラークの脆弱性に及ぼす影響は何でしょうか?
ニコルス医師:
まず最初に、OCTイメージングを用いてできたことは、観察試験を行って、LDLコレステロール値が高い患者さんは、このような脆弱性を示す特徴のあるプラークがある可能性が高いことがわかったということです。
ニコルス医師:
より強度の高いスタチン療法による治療を受けた患者は、このような脆弱なプラークの特徴を有する可能性がより低い傾向にあります。つまり、線維性被膜がより厚く、脂質アークが小さい傾向にあります。これらの試験のいずれにおいても重要なことは、LDLコレステロールの低下の程度が線維性被膜の厚さに関連しているということです。つまり、脂質をより大きく低下させればさせるほど血中のLDLコレステロールレベルを低下させ、安定化の程度が脂質低下の程度に正比例しているということを示す、非常に素晴らしいエビデンスが得られたということです。したがって、これは脂質はできるだけ低下させた方が良いという生物学的根拠を示しています。
ヘゲレ医師:
はい。その通りですね。時間が近づいているようなので、あと数分間でこれまでお話しした内容を要約します。
ヘゲレ医師:
まず、プラークの画像診断法、特にOCTとIVUSを区別しました。OCTとIVUSは、プラークの特徴を可視化し、効果的な脂質低下療法の評価に役立ちます。OCTは脆弱なプラーク特性を検出し、IVUSはプラーク負荷を評価します。また、脂質低下を強化させた場合のプラークの安定化に対する効果も検討しました。したがって、LDLコレステロール値の低下は、脂質アークを薄くし、線維性被膜を厚くし、脆弱なプラークの割合を低下させていることは非常に明らかです。そして、これは様々な機会につながります。急性冠症候群患者の治療の全段階において、LDLコレステロール値を最適化し、プラークの安定性の特徴を改善するために行えることが複数あります。スティーブン、ポッドキャストを終える前に、何か付け加えることはありますか?
ニコルス医師:
これらの試験すべてで見られたのは、脂質低下を強化することの重要性だと思います。高血圧や糖尿病の治療と同様に、多くの患者さんで併用療法が必要とされています。脂質異常症は多くの患者さんにとって併用療法を必要とする可能性が高く、実際これらの試験でその利点が見られました。血液中のLDLコレステロール値の低下と動脈壁の生物学的利益を直接結びつけるものです。
ヘゲレ医師:
素晴らしいですね。ありがとうございました アテローム性プラークについて、LDLコレステロール低下の影響の評価、画像診断法を区別する良い方法について良くまとめていただきました。スティーブン・ニコルス教授のお陰で、プラークの組成とイメージングについてより深く理解できました。
ニコルス教授、今日はお話できてよかったです。
ニコルス医師:
ありがとう、ロブ。
アナウンサー:
このプログラムは、Amgenがお届けしました。聞き逃した部分があった場合は、ReachMD.com/industry-featureをご覧ください。こちらは、ReachMDです。
参考文献:
1. Sandfort V, er al. Circ Cardiovasc Imaging. 2015;8:e003316.
2. Virmani R, et al. Thromb Vasc Biol. 2000;20:1262-1275.
3. Stefanidis C, et al. J Am Heart Assoc. 2017;6:e005543.
4. MacNeill BD, et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2003;23:1333-1342.
5. Tardif JC, et al. Circ Cardiovasc Imaging. 2011;4:319-333.
6. MacNeill BD, et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2003;23:1333-1342.
7. Shah NR, et al. MOJ Anat Physiol. 2015;1:11-14.
8. Stefanidis C, et al. J Am Heart Assoc. 2017;6:e005543.
9. Baumann AAW, et al. Ther Adv Chronic Dis. 2020;11:1-23.
10. Hoshino M, et al. J Am Heart Assoc. 2019;8:e011820.
11. Papaioannou TG, et al. J pres Med. 2019;9:1-14.
12. Dweck MR, et al. Nat Rev Cardiol. 2016;13:533-548.
13. Puri R, et al. Eur Heart J. 2013:34:1818-1825.
14. Kataoka Y, et al. Atherosclerosis. 2015;242:490-495.
15. Tardif J-C, et al. Circ Cardiovasc Imaging. 2011;4:319-333.
16. Daida H, et al. J Atheroscler Thromb, 2019;26:592-600.
17. Nicholls SJ, et al. JAMA. 2007;297:499-508.
18. Gili S, et al. Eur Heart J. 2018;19:524-531.
19. Kataoka Y, et al. Atherosclerosis. 2015;242:490-495.
20. Amsterdam EA, et al. J Am Coll Cardiol. 2014;64:e139-228.
21. Grundy SM, et al. J Am Coll Cardiol. 2019;73:e285-350.